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Q&A発泡プラスチック系断熱材とは?種類とメリットについて徹底解説

発泡プラスチック系断熱材とは?種類とメリットについて徹底解説

住宅における断熱材とは、外部からの冷気や熱の伝導を遅らせ、室内の温度を一定に保つための素材です。断熱材を使用することで、夏は涼しく、冬は暖かいといった快適な室内環境を実現できます。

断熱材にはさまざまな種類があり、大きく「繊維系断熱材」と「発泡プラスチック系断熱材」の2つに分けられます。繊維系断熱は無機繊維系断熱材と木質繊維系断熱材の2種類、発泡プラスチック系断熱材はポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂の3種類に分類されます。

当記事では、発泡プラスチック系断熱材の概要や具体的な種類、取り入れるメリット、選び方まで詳しく解説します。

 

1. 発泡プラスチック系断熱材とは

発泡プラスチック系断熱材は、プラスチック素材を発泡させ、無数の細かい気泡を閉じ込めた独立気泡構造を持つ断熱材です。

繊維系断熱材(ロックウール、グラスウール、セルロースファイバーなど)は、細い繊維の間に空気を閉じ込めて断熱効果を発揮します。一方、発泡プラスチック系断熱材は、独立した小さな気泡内に発泡ガスを封入する構造が特徴です。

そのため、高い断熱性能を発揮するだけでなく、吸湿性も備えています。また、発泡プラスチック系断熱材は板状で剛性があり、この点も大きな魅力と言えるでしょう。

発泡プラスチック系断熱材は原材料となる樹脂の種類や生産方式によって、大きく4種類に分類されます。以下では、発泡プラスチック系断熱材の種類について紹介します。

 

1-1. ビーズ法ポリスチレンフォーム

ビーズ法ポリスチレンフォームは、発泡スチロールとしても知られる発泡プラスチック系断熱材の一種で、「EPS(Expanded Poly-Styrene)」とも呼ばれています。ポリスチレン樹脂と炭化水素系の発泡剤を使用して形成された原料ビーズを、予備発泡後に金型に充填し、高温の水蒸気で加熱して成形します。

日常生活でよく目にする発泡スチロールは、小さな白い粒子が集まってできています。これらの粒子は原料ビーズと呼ばれ、水蒸気で加熱されると30~60倍の大きさに膨らみます。この発泡過程で粒子の内部に空気が閉じ込められ、これが断熱効果を生み出す仕組みです。

ビーズ法ポリスチレンフォームは軽量で加工しやすく、施工性に優れています。また、金型成形によって形状や厚さを自由に調整できるため、幅広い用途に対応できる点も特徴です。

 

1-2. 押出法ポリスチレンフォーム

押出法ポリスチレンフォームは、ビーズ法ポリスチレンフォームと同様にポリスチレンを原材料とする発泡プラスチック系断熱材の一種で、「XPS(Extruded Poly-Styrene)」とも呼ばれています。

押出機の中でポリスチレンと発泡剤、添加剤を溶融混合し、外に押し出されたタイミングで連続的に発泡成形した後、一定の寸法にカットして板状の断熱材に仕上げます。

押出法ポリスチレンフォームは、ビーズ法ポリスチレンフォームと比べて粒子の大きさが小さく、断熱性が優れているのが特徴です。吸水性が低く、軽量で耐圧縮性にも優れているため、基礎や土間床断熱などの用途にも広く使用されています。

 

1-3. 硬質ウレタンフォーム

硬質ウレタンフォームとは、ポリオール成分とポリイソシアネートに発泡剤、整泡剤、触媒などを混合して発泡させた発泡プラスチック系断熱材です。一般的に、ソファのクッション材やスポンジとして使用されるウレタンを発泡させ、断熱性能を高めています。

硬質ウレタンフォームは、工場で発泡させた後にボード状で出荷する材料を指します。一方、現場で専用の機械を使用し発泡させるものは「吹付ウレタンフォーム」と呼ばれ、吹き付け後にフォームが膨張し硬化することで、断熱材や防音材として使用されます。

硬質ウレタンフォームは、現場でカットし埋め込むだけで施工できる簡単さが特徴であるものの、ボードの寸法がずれると断熱性や気密性が損なわれる可能性があります。

また、難燃処理が施されていないウレタンフォームは、火災時に有毒ガスであるシアン化水素(HCN)が発生する危険性もあるので注意が必要です。

 

1-4. フェノールフォーム

フェノールフォームは、フェノール樹脂に発泡剤と硬化剤を加えて発泡・硬化させた発泡プラスチック系断熱材です。熱に強く燃えにくい「熱硬化性樹脂」の一種で、ウレタンフォームのように燃焼時に有毒ガスが発生せず、ポリスチレンフォーム(EPS・XPS)のように熱で収縮しない特徴があります。

製造方法により、フェノールフォームは耐熱性に優れた「レゾール型」と機械的強度に優れた「ノボラック型」の2つに分けられます。レゾール型は特に耐熱性、耐薬品性、難燃性に優れているため、国内で広く使用されています。

フェノールフォームは、耐久性・安全性の高さゆえに、ほかの発泡プラスチック系断熱材と比べて価格が高いのが難点です。また、シロアリに弱い性質を持つ点にも注意する必要があるでしょう。

 

2. 発泡プラスチック系断熱材のメリット

住宅に発泡プラスチック系断熱材を使用することには多くのメリットがあります。具体的なメリットは、使用される樹脂の種類によって異なります。

以下では、ポリスチレン樹脂・ポリウレタン樹脂・フェノール樹脂それぞれのメリットを紹介します。

 

2-1. ポリスチレン樹脂

ポリスチレン樹脂を用いた発泡プラスチック系断熱材には、ビーズ法ポリスチレンフォームと押出法ポリスチレンフォームがあります。主なメリットは下記の通りです。

ポリスチレン樹脂のメリット
  • 断熱性に優れ、劣化しにくい
  • 水や湿気に強い
  • 軽量である

ポリスチレン樹脂を使用した断熱材は、高性能グラスウールと同等かそれ以上の断熱性能を持つとされています。さらに、水や湿気に強く、結露が起こりにくいほか、経年劣化が少ない点もメリットです。

また、ポリスチレン樹脂の断熱材は軽量で、輸送コストの削減や施工の容易さに貢献します。建物全体の重量も軽くなり、相対的に地震に対する抵抗力が高まる点も魅力です。

 

2-2. ポリウレタン樹脂

ポリウレタン樹脂を用いた発泡プラスチック系断熱材には、硬質ウレタンフォームや吹付ウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォームがあります。主なメリットは下記の通りです。

ポリウレタン樹脂のメリット
  • 住宅の断熱性を大幅に高められる
  • 耐水性に優れ、劣化しにくい

ポリウレタン樹脂の断熱材は、微細な独立気泡に熱伝導率の極めて低いガスが含まれているため、住宅の断熱性を大幅に向上させる点が最大のメリットです。これにより、夏の暑さや冬の冷気を効果的に遮断し、1年を通じて快適な住環境を維持できます。

また、水や水蒸気の侵入を防ぐため、耐水性に優れています。これにより結露対策にも効果があり、湿気が多い床下の施工にも適しています。さらに、経年劣化を抑えることができ、長期間にわたって安定した性能を発揮することも注目したいポイントです。

 

2-3. フェノール樹脂

フェノール樹脂を用いた発泡プラスチック系断熱材の代表例は、フェノールフォームです。下記に、フェノールフォームのメリットを紹介します。

フェノール樹脂のメリット
  • より高い断熱性能を発揮する
  • 耐水性に優れている
  • 耐火性・難燃性に優れている

フェノールフォームの熱伝導率は「0.020W/(m・K)」と言われており、高性能グラスウール断熱材の約2倍の断熱性を有しています。

また、フェノールフォームはプラスチックを主な原料としているため、耐水性にも優れています。プラスチックは熱に弱い傾向がありますが、フェノール樹脂は熱に強く、他の発泡プラスチック系断熱材よりも耐火性・耐熱性に優れていることも特徴です。

フェノール樹脂は、フライパンのハンドルにも使用されており、仮に引火・燃焼しても有毒ガスがほとんど発生しない点が評価されています。

 

3. 断熱材の選び方

発泡プラスチック系断熱材を選ぶ際は、下記のポイントに着目するとよいでしょう。

  • 断熱性能
  • 施工部分
  • コスト

断熱材を選ぶ際、最も重要となるのは断熱性能です。断熱性能は熱伝導率の値で示され、熱伝導率が低いほど、より高い断熱性能を発揮します。

また、施工部分に応じた断熱材選びが重要です。例えば、火に弱いポリスチレン樹脂を用いた発泡プラスチック系断熱材は、キッチンのように火を扱う場所には適していません。

断熱材のコストは種類によって異なるため、価格も重要な判断基準です。高性能な断熱材は初期コストが高いものの、長期的に見ると光熱費の節約やメンテナンス費用の低減につながります。したがって、コストと性能のバランスをよく見て、投資効果を考慮しつつ選ぶのが大切です。

断熱材は施工後の交換・入れ直しが難しい建材です。断熱性能、施工部分、コストの3つのポイントを比較しながら最適な断熱材を選ぶことで、より快適な住環境を実現できます。

 

まとめ

発泡プラスチック系断熱材は、プラスチック素材を発泡させて無数の細かい気泡を閉じ込めた構造(独立気泡構造)の断熱材です。樹脂の種類や生産方式の違いによって4種類に大別されており、それぞれ違った特徴や魅力があります。

発泡プラスチック系断熱材を選ぶ際は、断熱性能、施工部分、コストの3つのポイントを比較・検討することが大切です。ここまでの内容を参考に、家づくりの際にはぜひ最適な断熱材を選んでみてはいかがでしょうか。

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