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Q&Aロックウールとは?危険性・安全性やメリット・デメリットを解説

ロックウールとは?危険性・安全性やメリット・デメリットを解説

ロックウールは、建築資材や農業用培地として幅広く活用されている鉱物由来の繊維素材です。高温で溶かした岩石を繊維状に加工して作られたロックウールは、断熱性や耐火性に優れ、住宅や商業施設などの断熱材として使われています。

しかし、アスベストに似た性質があるため、健康への影響を心配する声も少なくありません。当記事では、ロックウールの基本的な特徴や危険性・安全性、そして使用する上でのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

 

1. ロックウールとは?

ロックウールとは、建物の断熱材や吸音材、耐火材などに用いられる天然鉱物由来の繊維です。鉄を生産する際に出る高炉スラグや玄武岩などの天然岩石を1,500~1,600°Cの高温で溶かし、繊維状に加工してできた素材がロックウールです。

ロックウールの原料は高温で溶ける性質を持っているため、ロックウールも熱や火に強い特徴があります。繊維の間には空気が含まれており、防音や断熱にも優れていることから、さまざまな建築物に使用されています。

ロックウールが活用されているのは、建設現場だけではありません。繊維を重ねる方向や密度を変えると、保水力や通気性をコントロールできるため、ピーマンやイチゴ、花などあらゆる植物の栽培用培地としても使用されています。

 

2. ロックウールの危険性・安全性は?

「ロックウールにアスベストのような危険性があるのではないか」と心配される方は少なくありません。ここでは、ロックウールとアスベストの違いや、安全性について紹介します。

 

2-1. 大きな健康被害を引き起こす可能性は低い

ロックウールは、建築資材としての有害性が認められていない安全な素材です。断熱材の用途でロックウールが使用された住宅を長期間使用しても、人体に悪影響を及ぼすような危険性はありません。

ただし、直接ロックウールに触れる内装工事や解体工事の現場では、適切な防護具の着用など、しっかりとした安全対策が求められます。ロックウールは細かい繊維でできているため、多量吸入は避けましょう。長時間ロックウールにばく露すると、皮膚のかゆみや炎症、目の刺激、鼻水、咳などの症状が出る場合があります。

とは言え、一般の居住者がロックウールに直接触れる機会はあまりないため、断熱材にロックウールを採用することによる健康被害を心配する必要はないでしょう。

 

2-2. ロックウールとアスベストの違い

ロックウール(岩綿)とアスベスト(石綿)は、断熱や耐火、防音などの似た性能があるため、混同されやすい素材です。しかし、ロックウールとアスベストにはさまざまな違いがあります。

人造の鉱物繊維であるロックウールは、天然鉱物繊維であるアスベストよりも数十倍から百倍ほど太い素材です。そのため、もし直接吸入した場合も、呼吸器系に入りにくい特徴があります。一方でアスベストの繊維はとても細かく、呼吸器系に入りやすい危険性があります。

さらにロックウールには、酸に弱い特性があります。万が一吸い込んだ場合も、体内で溶けて無害化されるため、安全性が高いと言えるでしょう。一方でアスベストは、体内で溶けずに肺の深部まで到達します。排出されない有害物質が体内に滞留するため、現在は建築資材としての使用が禁止されるだけでなく、古い建築物ではアスベスト調査や除去工事が進められています。

 

2-3. ロックウールに発がん性はある?

過去には、ロックウールの繊維にアスベストと同様に発がん性があるのではないかと懸念されていました。しかし、近年の研究では、ロックウールが肺がんを引き起こすリスクは低いとみなされています。

国際がん研究機関(IARC)は、発がん性を分類した「発がん性分類」を発表しています。ロックウールは「ヒトに対する発がん性が分類できない」に該当するグループ3です。グループ3にはお茶やコーヒーも同じ分類に含まれるため、ロックウールの安全性は高いと言えるでしょう。

過去にロックウールと同一視されていたアスベストは、「ヒトに対する発がん性がある」とみなされているグループ1に区分されています。分類の違いからも、ロックウールとアスベストが全く異なる素材であることが分かります。

出典:厚生労働省「世界保健機構(WHO)の国際がん研究機関(IARC;International Agency for Research on Cancer)におけるヒト発がん性分類」

 

3. ロックウールのメリット

ロックウールには、断熱性や耐火性の高さを含め、さまざまな特徴があります。ロックウールを断熱材に利用するメリットは、以下の通りです。

  • 断熱性に優れている
    ロックウールの繊維の隙間には多くの空気が含まれています。建物内への暖気や冷気の侵入を防いでいるのが、ロックウールの細かい繊維の隙間に挟まれている空気です。動けない空気が壁のような役割を果たしているため、密度が高いロックウールほど断熱効果に優れています。寒冷地の住宅への施工であれば、ロックウールの密度や分厚さにも注目するのがおすすめです。
  • 耐火性能が高い
    ロックウールは耐熱温度の高い素材でできており、法定不燃材として認められています。ほかの素材と組み合わせることで、高い耐火性を示します。屋外からの延焼を想定した実験では、ロックウールを用いると建物自体の耐火性を高められることが明らかになりました。
  • 吸音性が高い
    暖気や冷気の侵入を防ぐロックウールの細かい繊維は、音の出入りも防ぐため、防音材としても機能します。繊維の中に入った音は、圧縮と膨張の繰り返しにより、熱エネルギーに変換されて消滅します。ロックウールは、低音域よりも高音域の吸音が得意です。ロックウールの厚みが増すと低音域の吸音効果も高められるため、一般住宅の生活音対策として十分な性能が期待できます。

断熱材としてのロックウールは、耐久性が高いのも特徴です。経年劣化が少なく、長期にわたり断熱効果や耐火性を維持できるため、住宅への施工にも適しています。さらにリサイクル可能な素材であり、環境に優しい選択肢とも言えるでしょう。

 

4. ロックウールのデメリット

断熱材としてだけではなく、耐火や防音にも優れたロックウールにも、デメリットはあります。ロックウールを使用するデメリットは以下の通りです。

  • 価格が高い
    ロックウールは、同じ人工繊維のグラスウールと比較すると、価格が高いデメリットがあります。しかし、防音性や耐水性、撥水性などの性能面は、グラスウールと比較するとロックウールが優位です。建物周辺の環境を考慮にいれて、性能とコストパフォーマンスを比較検討する必要があるでしょう。
  • 湿度に弱い
    ロックウールには高い耐水性がありますが、湿度には弱い特徴もあります。高い湿度が続くと繊維が水分を吸い、性能に変化が生じる可能性があることがデメリットです。繊維によって形成されていた細かい隙間がなくなると、空気や音の流れも変化し、断熱性や防音性に影響を及ぼします。湿度の高い場所にある建物なら、ほかの断熱材も候補に入れるとよいでしょう。
  • 脱落しやすい
    鉱物が原料であるロックウールは、重みがあるのも特徴です。施工時にしっかりと固定されていなければ、壁の下部に脱落する場合があります。ロックウールに偏りが生じると、十分な断熱効果や防音効果などは期待できません。脱落を防ぎ、偏りや隙間のない施工を求めるなら、技術力と施工実績のある業者選びが重要です。

断熱材として多くの建物で使用されているロックウールには、さまざまな優れた性能がある反面、価格や重さなどのデメリットもあります。無機繊維系断熱材と呼ばれるロックウールやガラス繊維でできたグラスウール以外にも、断熱材にはさまざまな素材があるため、長所短所を比較検討するとよいでしょう。

 

まとめ

ロックウールは、その優れた断熱性や耐火性が評価され、住宅から商業施設までさまざまな建築物に採用されています。また、防音性や環境への配慮もあることから、リサイクル可能な素材としても高く評価されている素材です。

一方で、価格の高さや湿度への弱さといったデメリットもあり、使用環境に応じた選択が重要です。ロックウールはアスベストとは異なり、発がん性のリスクが低いため、安全性の高い断熱材として広く推奨されています。

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